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『わからなくなってきました』 宮沢章夫
中毒になる「宮沢章夫風思考回路」 2010年10月19日(火)
『わからなくなってきました』
- 宮沢章夫
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- 新潮文庫
- 476円(税別)
- 2000年1月発行
著者は劇作家・演出家で作家。「独特な語り口のエッセイにもファンは多い」と、プロフィールに書いてある。解説を書いた別役実氏(劇作家で童話作家、評論家でもある)によると、「宮沢章夫風思考回路」があって、それが人を中毒させるらしいのだ。確かに読み進めていくうちに、「なんかよくわかんないけど、これはこれでいいよね~」といった、ゆるい気分になってくる。一種の中毒症状かもしれない。
このエッセイ集の中に「盛岡といい人」という一文がある。著者が盛岡市を訪れたとき、信じられない親切に出会い、「盛岡には、いい人しかいない」と驚く。しかし、それには何か「おそるべき魂胆がある」というのだ。そういえば何年か前、盛岡市民がいい人かどうかを確かめる実験をしていたテレビ番組があった。もしかしてそれは、著者の魂胆だったのか。本書を読み直して、そう思ってしまった。