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『鉄道ひとつばなし』 原武史
「鉄道は単なる趣味ではない」 2010年10月19日(火)
『鉄道ひとつばなし』
- 原武史
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- 講談社現代新書
- 740円(税別)
- 2003年9月発行
講談社のPR誌『本』に、1996年から2003年にかけて掲載されたエッセイをまとめた本。著者は政治思想史が専門の学者というから、鉄道は趣味の世界と思いきや、「序」の中で、「鉄道は単なる趣味ではない」ときっぱり。経済史や経営史の研究対象であり、専門分野にとっても「テキストを読むだけでは見えない重要な手掛かりを与えてくれる」のだという。確かに、序章「思索の源泉としての鉄道」、第四章「歴史の駆動車としての鉄道」、第八章「鉄道比較文化論」など、学術的なテーマ立てで、鋭い分析を見せている。
その中で岩手県は…。いきなりこう来るか、である。序章二つ目のエッセイ「駅から見た東京に出づらい都道府県ランキング」で堂々の1位獲得なのだ。なぜそうなったかについては本書を読んでいただくとして、こういう内容を見ても、単なる鉄道好きの趣味の世界でないという著者のスタンスがわかる(気がする)。岩手出身の後藤新平に関する文もある。できることなら、鉄道の旅をしながら読みたい本である。