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『壬生義士伝』 浅田次郎

「あっぱれな花こば咲かせてみよ」  2011年5月10日(火)

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『壬生義士伝』

  • 浅田次郎
  • *****************
  • 文藝春秋
  • 上下巻各1524円(税別)
  • 2000年4月発行

テレビドラマにも映画にもなったから、よくご存知の方が多いだろう。南部藩を脱藩した吉村貫一郎という新撰組隊士の生涯を描いた時代小説である。読んだ人は皆、吉村の生き方に、家族への思いの深さに涙せずにはいられなかったようで、発刊当時、「電車で読んでいたのだが、涙が止まらず困った」「ティッシュの箱を横に置いて読んだ」という話をよく聞いた。
毎年この季節になると、『壬生義士伝』のページをめくる。藩校で教えていた吉村が、子どもたちに贈った言葉を読みたくなるからだ。奥州街道の果てにある南部盛岡は西国のような実りはないと前置きし、吉村はこう言った。「盛岡の桜は石ば割って咲ぐ。盛岡の辛夷は、ほれ見よ、北さ向いても咲ぐではねえか」…。そして最後に、「あっぱれな花こば咲かせてみよ」と。
今年も石割桜が花を咲かせ、こぶしの花もほころんだ。長く厳しい冬のあとには、春がめぐってくる。

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