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『つなみ』 田畑ヨシ
命を守るための大切なことが見えてくる。 2011年9月28日(水)
『つなみ』
- 田畑ヨシ
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- 産経新聞出版
- 1500円(税別)
- 2011年7月発行
宮古市田老に生まれ育った著者は、明治の津波を経験した祖父から、いつも津波の話を聞かされていた。昭和8年(1933)、8歳のとき大津波に遭い、母親を亡くした。津波の怖さを忘れてはいけない、もっとも怖いのは忘れてしまうこと…。次世代の命を守りたいとの思いで紙芝居を作り、30年以上にわたって子どもたちに自身の体験を語り継いできた。表紙に「おばあちゃんの紙しばい」とあるのは、そのためだ。その紙芝居が本になった。
絵本の中には、8歳の「よっちゃん」がいる。つらい体験は、今もまざまざと思い出されるのだろうと察せられる。祖父と同じように二度目の大津波を体験した86歳のよっちゃんは、「これからも津波の怖さを語り継いでいきたい」と書いている。紙芝居を解説とともに読むと、命を守るための大切なことが見えてくる。同時に、著者がいかにふるさとと、そこに住む人たちを愛しているかも伝わってくる。